
私たちのトマトジュースが
給食のトマトゼリーになりました。
横浜市立 上菅田特別支援学校様
よこはまくろふね(アグリシステム羽沢のオリジナルブランド)の「手づくりトマトジュース」が、このたび、給食のトマトゼリーになりました。初めてのことです。給食に使ってくださったのは、横浜市立上菅田特別支援学校様です。そこで、笹平みどり校長先生と、金子良仁先生(栄養教諭)にお話を伺ってきました。

笹平みどり校長先生
横浜市で最初の肢体不自由養護学校として開校した上菅田特別支援学校は現在、市内全域から162名の児童・生徒さんが通学する市内最大規模の学校です。まずは、笹平校長先生にお話を伺いました。
「この食事が、もしかしたら口から食べる生涯最後の食事かもしれない」。その覚悟で食育に臨んでいます。
― 校長先生の「教育」に対するモットーをお聞かせください。
学校は学びの場。学校では、楽しく、一人ひとりが自分らしさを出して、自分らしい活躍や役割を果たしてもらいたいと思っています。そして、社会に出て、自分の役割を果たすこと。それがモットーですね。
― 校長先生の「食育」に関してのお考えをお聞かせください
私の両親は長い間レストランを経営していましたので、お客様が食事を楽しむシーンを目の当たりにして育ってきました。ですので、「食べることって生きること」。それが自分の中のベースにあるんです。
本校には口から食べられない児童・生徒もいます。そのような児童・生徒に対しても、柔らかい食材をそのまま注入するのではなく、「いまのはトマトだよ。匂いする?」などと味などの情報を伝えながら食事をさせています。そういうことも含めてが、わが校の食育だと思っています。
― なるほど。特別支援学校ならではなんですね
以前の学校の栄養士さんが言っていたことなのですが、「この食事が、もしかしたら口から食べる生涯最後の食事かもしれない。そう思って私たちは(給食を)提供しているんです」って。それがとっても印象に残っています。それまでは一般の中学生しか見てこなかったので、「食べることは生きること」。それが強烈に自分の中に刻みこまれました。食べる楽しさ、そして食べることが生きることにつながるということ。本校における食育は、それが根本にあると思います。
アグリシステム羽沢は高等部の生徒の進路先。今後は中学生の見学も。
― 貴校は開校から47年の歴ある学校。一方、アグリシステム羽沢は「就労継続支援B型事業所(*1)」として2019年4月に開所したばかりです。いつ頃、アグリシステム羽沢を知ることになったのでしょうか。きっかけ、経緯などを教えてください
手づくりトマトジュースの販売に来てくださって知りました。それ以来の縁で、今では所長さん(弊所・横内)に小学校運営協議会(*2)の一員をお願いしてるんです。位置的にも一番近くにありますし、本校の卒業生もお世話になっています。これからも長くお付き合いしていきたいと考えています。例えば、コロナが収まったら、中学生の見学も実現できればと思っています。
*1:就労継続支援B型事業所:障害があり通常の事務所での雇用が困難な人に就労機会を提供することで職業訓練を行う事業所のこと
*2:保護者や地域住民が学校運営に参画する「学校運営協議会」制度。コミュニティ・スクール
― 最後に、同じ横浜市で活動する公的な団体として、アグリシステム羽沢へメッセージをお願いします
私たちは児童・生徒の自立を目標にがんばっています。自立は労働だけとは限りません。支援者から支援を受けながら自分らしく生きる。それもまた自立です。生徒たちの卒業後の進路はさまざま。大学への進学、就Aや就B(*3)にいく生徒もいる。生活介護の施設に行く生徒もいます。それぞれの自立のカタチがあるんです。
みんなみんながアグリさんに就職するわけではない。だけど、そういう(就職先としての)場所が近くにあって、関係が繋がっていく。社会に出るんだっていうことを、小学部、中学部のうちから意識できるので、大変にありがたいと思っています。また今回、この給食の材料として実際に(卒業生が)納品してくださって、そこでも繋がっている。
子どもたちって、自分たちが働くというイメージがなかなか持てないんですよ。それだけに納品してくれたのが本校の卒業生であることは、現在の高等部の2年生や3年生なら「あ!あの先輩ですね」ってわかるはず。これもすごく大事なことかなと思っています。働くこと、卒業後の自分をすごく具体的にイメージできますからね。今後とも、よい関係を築きたいと思っています。
― 校長先生、今回はありがとうございました。
*3:就労継続支援A型事業所:雇用契約を結び利用するのが「A型」。一方、雇用契約を結ばないで利用するのが「B型」です。「A型」では一定の支援がある職場で雇用契約を結んだ上で働くことが可能です。


金子良仁先生(栄養教諭)
栄養教諭である金子先生。お仕事の内容、一つは給食管理、給食室の献立づくり、発注、衛生管理。もう一つは学校全体の食育の推進。いつも給食の時間になると「各教室を見回りして、給食の反応を聞いているんです」。さて、今回は?
「せっかくのアグリシステム羽沢さんの『手づくりトマトジュース』なので、いつもとはちがう献立にしたい」
― 今回のトマトジュースを使って給食のゼリーするというのはいつ頃、どなたが?
私の発案です。昨年度末、3月くらいでしょうか。校内で、卒業する高校3年生の進路先を共有する時間があったんです。そこで私はアグリシステム羽沢さんを初めて知りました。
― はい
ホームページを見させていただいて。そうしたら手づくりでトマトジュースを作っていると。しかも、本校の卒業生が働いていると。だったら、それを給食の材料にするのはどうかなと。それが始まりでした。
― 今日のゼリーの評判はいかがですか?
3対7です(笑)。3が大好き派、7は酸っぱそうだな、思ってたのと違うなぁという反応でした。
― 手厳しいですね(笑)
トマトゼリーにするかは最後まで相当悩んだんです。ミネストローネスープにしようか、ミートソーススパゲッティに使おうかなどいくつか案はあったんです。みんなが大好きなミートソーススパゲティにすることは難しくありません。しかし、それだと通常のトマトの缶詰とかとは違いがはっきりしないんです。いつもみんなが味わっている献立の中に埋もれてしまうのが心配だった。せっかくのアグリシステム羽沢さんの『手づくりトマトジュース』なので、なにかいつもとはちがう献立にして、子どもたちに味わってほしかった。印象にも残りますし。それも食育かなと思いました。そこで、トマトゼリーという初めての献立にチャレンジしたわけです。
― インパクトとしては成功だったのでは?
そうですね。(アグリシステム羽沢の)トマトジュースだけで作りました。足したのはお砂糖とレモン果汁だけです。もっと甘くしないと!とは思っていたのですが、アグリシステム羽沢さんの手づくりトマトジュースにかける熱い思い、“無添加で仕上げる”ことに対するこだわりなどを事前に伺っていたので、あまりいろんな味を足しちゃうのもどうかなと。お砂糖は控えめにしたので、ちょっと酸っぱいという子どもたちの印象は想定の範囲内です(笑)
― アグリシステム羽沢の手づくりトマジュース。味はいかがですか?
初めて飲んだ時はすっごく濃厚で、こんなに甘くておいしいジュースがあるなんてと思いました。次はミネストローネとかミートソーススパゲティに使いたいと考えています。
― 食育について
私自身食べることがすごく好きで、押し付けにならないように気を付けながら、子どもたちには「食べることって楽しいことなんだよ」ということを伝えていきたいと思っています。
― 献立作りで心掛けている点は?
経験値が少ない子が多いので、食材に関しても、料理に関してもあまり小学校で使わない珍しい食材、子どもにそんなには好かれないかもしれない食材なども意識的に用いるようにしています。子どもに好かれない食材・献立でも、敢えて「食の経験値アップ」を目的に、考えて作って出したりしています。今回のトマトゼリーでも、子どもたちの状態、口の機能などに合わせるために、普通食、軟菜(なんさい)食、きざみ食、ミキサー食など複数の種類に分けて作っています(*4)。
― 最後にひと言お願いいたします
事業所さんと直接やりとりをして、材料を調達して、給食の献立として出す。今回のこういった取り組みは初めてのことです。通常よりは連絡や調整作業が増えましたけれども、その分、子どもたちには還元できたかなと思います。全国的にもっと、このような取り組みが広まればよいなと思っています。
― 金子先生、ありがとうございました。
*4:特別支援学校では噛む力や飲み込む力がまだ十分身に付いていない児童・生徒さんもいます。上手に嚥下や咀嚼ができない児童・生徒さんでもさまざまな食べ物を上手に食べられるように、複数の形態の給食が提供されています。
【軟菜食】:よく煮込んだり茹でることでやわらかくした食事
【きざみ食】:食べ物を小さく刻んで、まとまりをよくした食事
【ミキサー食】:ミキサーにかけて、粒がないなめらかな状態にした食事。

美味しいゼリーができるまで
今回の「手づくりトマトジュース」の納品から、給食室での調理、給食風景まで。
その全工程をスライドショー(全部で20枚)でご覧ください。
「手づくりトマトジュース」のラベルを貼ります。
商品の完成です。出荷を待ちます。
今回、私たちのトマトジュースを給食(トマトゼリー)にしてくれた金子先生。感謝です!
「手づくりトマトジュース」のラベルを貼ります。
金子先生「キューブ状のゼリー(16~19の写真)は『普通食』のものです。普通食はクラスごとに大きなバットつくり、教室で切って盛り付けるため、あのような形になっています。小皿のもの(13、14の写真)は『特別食』(軟菜食・きざみ食・ミキサー食共通)のものです。固めるための材料が異なるため見た目だけでなく、食感も異なっています」
※調理スタッフのみなさまの食事シーンについて:通常は感染対策を講じて食事をしています。今回は撮影用に一時的に向かい合って食事をしていただきました


